子会社設立のメリットとデメリット

新規事業を立ち上げる際や、既存ビジネスを独立させる際に検討する子会社設立。
子会社設立には、経営の効率化や節税効果のみならず、より多くの人材に責任あるポジションを経験させられる等、多くのメリットがあります。

一方で、子会社設立にはランニングコスト増加等のデメリットもあります。デメリットを考慮せずに子会社を設立してしまうと、子会社設立を後悔してしまう可能性もあります。
一度会社を設立してしまうと、やめる(清算させる)にはコストだけではなく、それなりの手間もかかります。

子会社設立のメリットとデメリットの双方を正しく理解して、子会社を設立するかどうかの意思決定をしましょう。

 

【メリット①】子会社設立による節税

漠然に、税金を抑えたいという理由から子会社設立を検討しているケースは多いように見受けられます。しかし、節税で最も重要なポイントは「なぜ税金を抑えることができるのか」を経営者自らが理解することです。

そこでまずは、子会社設立で受けることができる主な節税メリットを紹介します。

(1)  親会社と子会社の両社で法人税の軽減税率の適用を受けることができる

課税所得(≒利益) 法人税率
~年800万円 15%
年800万円を超える部分 23.2%

(2021年9月現在:資本金が1億円以下等の中小法人の場合)

通常の法人税率は23.2%ですが、所得金額のうち年800万円までは15%の法人税率が適用されます。
例えば、年間の課税所得(≒利益)が1,500万円の会社があったとします。以下の通り、この会社の法人税額は282万円となります。

課税所得(≒利益) 法人税額
~年800万円 800万円×15%=120万円
年800万円を超える部分 (1,500万円-800万円)×23.2%=162万円
合計 282万円

 

もし、この会社が子会社を設立し、年間の課税所得(≒利益)1,500万円を親会社と子会社とで半分ずつに分散させることができた場合、それぞれ課税所得800万円までの軽減税率15%の適用を受けることができるので、以下の通り、合計で224万円の法人税額となります。

(親会社)

課税所得(≒利益) 法人税額
~年800万円 750万円×15%=112万円
年800万円を超える部分
合計 112万円

(子会社)

課税所得(≒利益) 法人税額
~年800万円 750万円×15%=112万円
年800万円を超える部分
合計 112万円

このように、所得を分散させてそれぞれで軽減税率の適用を受けることは、子会社設立における一つ目のメリットとなります。

子会社設立の有無の比較

子会社設立なし 子会社設立あり
親会社 ・800万円×15%=120万円
・(1,500万円-800万円)×23.2%=162万円
750万円×15%=112万円
子会社 750万円×15%=112万円
合計 282万円 224万円

 

(2) グループ全体でみると交際費の損金算入限度額が増える

交際費は年間800万円までは費用として認められる、というのは多くの方が聞いたことがあるかと思います。

これは、本来交際費は「税金計算上の経費にすることができない」中にあって、資本金が1億円以下等の中小法人においては「特別に年間800万円までは税金計算上の経費にすること」を認めるものです。

この年間800万円までというのは「1社あたり」の限度額なので、親会社は800万円、子会社は800万円とそれぞれ限度額を持つことができます。交際費が多額に発生する業種の場合は、子会社を設立することで、子会社でも交際費枠を獲得することができるようになります。

ただし、交際費は「事業に関係のある者に対して行う接待等」と税務上はルールが定められています。800万円の限度があるからと言って生活費や私物購入費用を経費計上していると税務調査で痛い目にあいますので注意が必要です。

 

(3) 子会社でも消費税の納税義務の免除が受けられる可能性がある

資本金1,000万円未満の会社を設立した場合、基本的に最初の2期は消費税を納める義務が免除されています。

そのため、親会社で消費税の納税義務者となっていた場合であっても、子会社を設立し所得分散をさせることによって、子会社側で発生した消費税の納税義務が免除されることもあります

ただし、設立した子会社が2年間の免税事業者の権利を得るためには資本金の設定だけではなく様々な要件をクリアしなければなりません。

また、消費税法は年々改正がされており、2023年からは新しい消費税の制度である「インボイス制度」の導入が見込まれているため、免税事業者となるメリットが希薄化することが予想されます。

消費税の免税事業者を狙って子会社設立をしたにもかかわらず、結果として消費税の課税事業者となってしまったという悲惨な状況を避けるためにも、消費税の判定については税理士のアドバイスを聞きながら慎重に判断することが得策です。

 

(4) 所得分散により、消費税の簡易課税制度の利用可能性が高まる

消費税とは、取引先から預かった消費税から、自社で支払った消費税を差し引いて納める税金となります。

人件費が大半のサービス業の場合、売上に係る消費税お客様から預かる消費税は多いにも関わらず、仕入れに係る消費税が無いため、預かった消費税の大部分をそのまま国へ納めることになります。

このようなサービス業などのビジネスを行う納税者向けの制度として「簡易課税制度」という制度があり、自社が支払った消費税を、業種ごとに定められた一定のみなし仕入れもとに計算することができます。

例えば売上が3,000万円、消費税の課税対象となる仕入が500万円のサービス業の場合は、以下の通り簡易課税制度を選択した方が有利となります。

原則 簡易課税
① 預かった消費税 3,000万円×10%=300万円 3,000万円×10%=300万円
② 支払った消費税 500万円×10%=50万円 300万円×50%=150万円
納付額(①-②) 250万円 150万円

ただし、この簡易課税制度を適用することができる会社は、2期前の課税売上高が5,000万円以下の会社に限られていますので、一定規模以上の会社は簡易課税制度の適用を受けることができません。

しかし、子会社を設立して所得分散をすることで、親会社と子会社のいずれも(又はいずれか)で簡易課税制度を適用させることが可能となる場合もあります。ただし、(3)の免税事業者のように、消費税に関する特例を利用する場合には、様々な要件や事前の届出が必要となります。
制度としては理解しつつも、実際の適用を検討する段階では、必ず税理士のアドバイスを聞きながら慎重に進めることをお勧めします。

 

【メリット②】節税以外のメリット

子会社設立には節税以外にも、ビジネス上の観点からメリットが多くありますが、ここでは主なビジネス上のメリットを4つ紹介します。

(1) リスクの分散

万が一、子会社で不祥事が起きてしまい子会社の事業の継続が難しい状況になったとしても、親会社は別会社のため事業を継続することができる可能性があります。もちろん親会社としての責任追及ということもあり得ますが、子会社設立により経営上のリスク分散をすることができるというのはメリットの一つと言えます。

(2) 意思決定スピードの向上

事業規模が大きくなると意思決定のための社内承認プロセスに時間がかかることや、経営者の指示やビジョンをすべての社員へ共有することに時間がかかることがあります。

子会社を設立して特定の事業をその子会社で行う場合などは、少数精鋭として会社の意思決定やビジョンの共有をスムーズに行うことができるようになります。

(3) 損益管理が把握しやすい

親会社の一事業を子会社として独立させた場合、子会社は親会社とは別に会計を行う必要があります。これにより、事業ごとの損益がより明確になり財務情報が把握しやすくなります。

もちろん独立した管理をしなければならないため管理コストは発生しますが、子会社に責任を持った損益管理をさせることで、グループ全体としての成長を期待することも可能です。

(4) 事業の売却等がスムーズに行える

会社の中の特定の事業のみを売却したい場合には、会社分割や事業譲渡というスキームを使う必要があります。

しかし、当該事業が子会社となっている場合には、子会社株式の譲渡を行うのみで取引が完結します。株式売却は、通常、会社分割や事業譲渡よりもシンプルな手続きで済みます。

また、跡継ぎの候補者が2人以上いる場合などは、会社自体を2つに分けて継がせることにより、跡継ぎに関するトラブルを防ぐことができますので、事業承継という面からも子会社設立はメリットと言えます。

 

【デメリット①】設立コストだけでなくランニングコストが増加する

子会社を設立する際には、定款認証費用や登録免許税、設立手続を専門家に依頼した際の手続代行費用など、子会社設立費用が発生するだけではなく、銀行口座の開設から税務署等への届出など、それなりに手間もかかります。

そして設立費用のみならず、例えば以下のようなランニングコストも子会社において追加発生します。

(1) 子会社オフィスの賃借料

親会社とは別の法人格をもって登記をする必要があるため、子会社のオフィスを用意する必要があります。

勿論、親会社と同一住所で登記をすることも可能ですが、親会社のオフィスを一部間借りする場合は、そもそも親会社オフィスを子会社に転貸して可能か(子会社のオフィスとしての登記が可能か)を確認する必要があったり、子会社から親会社へ適切な賃料を支払う必要があったりと注意が必要です。

(2) バックオフィス費用

親会社と子会社では法人格が異なりますので、それぞれ独立した会計帳簿の作成・税務申告が必要となります。
即ち、それぞれ独立した損益を把握することができるというメリットがある反面、会計ソフトや専門家(税理士・社会保険労務士・弁護士等)などの契約を子会社としても行う必要があるのです。

また、子会社が成長すれば、従業員の雇用も親会社とは別個で行うことになるでしょうから、就業規則や給与規定等も子会社単独で用意する必要が生じます。

このように、子会社を設立することによりバックオフィスに関連するコストや手間が追加で発生する点は注意しましょう。

(3) 法人住民税均等割

会社が納めるべき税金の中には、法人住民税のうち均等割というものがあります。

この法人住民税均等割は例え会社が赤字であっても毎年必ず発生する税金となります。

さらに、この法人住民税均等割は会社が所在している都道府県や市町村の自治体ごとに課税されるため、複数の支店を有する会社は支店が所在するそれぞれの自治体へ納税する必要があります。

法人住民税均等割の金額は、資本金等の額や従業員数によって異なり、また、自治体によっても多少金額が異なってきますが、東京都の場合(従業員50人以下の場合)は次の通りとなります。

資本金等の額 法人住民税均等割
1千万円以下 70,000円
1千万円超~1億円以下 180,000円
1億円超~10億円以下 290,000円
10億円超~50億円以下 950,000円
50億円超 1,210,000円

法人住民税均等割は、毎年、会社ごとに発生しますので、子会社を設立の際のランニングコストとして認識しておきましょう。

 

【デメリット②】会社間での損益通算ができない

1つの会社で事業部が複数あった場合、例えば、X社がA事業とB事業を営む場合を考えてみましょう。

この時、X社の損益は、A事業部の赤字とB事業部の黒字を合算して計算され、合算した損益に基づき法人税が課税されます。この合算した金額がマイナス、すなわち会社全体として赤字であった場合にはその会社の法人税は発生しません。(先ほど紹介した法人住民税均等割は赤字であっても発生します。)

A事業(X社A事業部) △3,000万円(赤字)
B事業(X社B事業部) +2,000万円(黒字)
X社の損益合計 △1,000万円→赤字のため法人税は発生しない

 

次に、A事業部とB事業部が異なる会社の場合を考えてみましょう。例えば、A事業はX社が、B事業は子会社のY社が営んでいるとします。

B事業を子会社として独立させた場合、法人税は会社ごとに計算することとなりますので、赤字会社のX社では法人税は発生しないものの、黒字会社のY社では法人税が発生することとなります。
結果として、このようなケースでは、グループ合計の法人税負担は、前述の場合(X社がA事業とB事業の両方を営む場合)よりも大きくなります。

A事業(X社) △3,000万円(赤字)→赤字のため法人税は発生しない
B事業(Y社) +2,000万円(黒字)→30%程度の法人税が発生

 

このように、法人格が分かれることで、会社間の損益通算ができないことがデメリットの一つと言えます。

なお、連結納税制度(2022年4月1日からはグループ通算制度)の適用を受けることができれば親子間での損益通算も可能となりますが、中小企業が連結納税制度(グループ通算制度)の適用を受けるためには管理面等で高いハードルがあります。従って、現実的には会社間での損益通算は難しいと考えた方が無難です。

(※)なお、赤字会社の場合、要件を満たせば「欠損金の繰越控除」の適用を受けることができ、発生した赤字を向こう10年間の黒字と相殺できることができますが、ここでは議論をシンプルにするため、一時点での影響比較に留めています。

 

【デメリット③】税務署から疑われる?

子会社を設立すると税務調査に入られやすいという噂もありますが、これはあながち嘘ではないと言えます。

子会社を設立するという行為自体が税務調査に直結することはありませんが、親会社と子会社間との取引が頻繁にある場合には、税務調査の時には必ずと言っていい程議論になります。
親子間での取引は利益の調整弁としやすいことから、性悪説で調査をする税務署にとっては、何かしらの疑いを持たれるのは当然です。

例えば、決算期が迫り、親会社側で子会社に対して架空の請求書を発行して経費の水増しをする等すれば即座に追徴課税の対象となるでしょう。

親子間の取引とは言え、第三者との取引と同じように、適正価格で実態のある取引をする場合には何ら問題ないですが、例えば請求書の発行を省略したり、著しく高額・低額な価格で取引をしたりしていると、税務調査での指摘対象となりますので、注意が必要です。

 

税務調査が入ったとしても、合理的な理由のある適正価格での親子間取引であれば、例え疑われたとしても指摘されることはありません。

  • 書類(契約書や請求書)の作成等の手続きは省略しない
  • 利益調整の目的で親子間取引を行わない
  • 適正価格にて実態のある取引を行う。

親子間で取引を行う場合には、これらを留意する必要があります。

 

おわりに

子会社設立には、節税面でもビジネス面でも多くのメリットがあります。

ただし、節税メリットを最大限享受するために子会社を設立する場合、例えば消費税のように適用要件が厳格なものもあるので、実際に子会社設立をする際は慎重に判断をしなければなりません。

また、バックオフィス費用(管理コスト)の増加等のデメリットを考慮せずに子会社設立をしてしまうと、メリットをデメリットが上回り、結果として手間ばかりかかって損までしてしまうということにもなり兼ねません。

子会社設立にはメリットとデメリットを総合的に考えて慎重に決定したいところです。

 

スペラビ法人ではお客様の状況に応じた「成長支援プラン」というサービスを提供しております。通常の顧問契約はもちろん、子会社設立をすべきかどうかの検討段階におけるサポートや、子会社設立をした後の管理面でのサポートなど幅広いサービスを提供しておりますので、子会社設立でお悩みの方は、まずはお問合せフォームより当法人にご連絡下さい。

 

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