法人成りの手続きを進めるにあたり、資本金はいくらに設定すべきか?というのは誰しもが悩むことです。
- 1円からでも設立できるけど、本当に1円でもいいのか?
- 100万円はあった方がいいと聞くけど、本当にそうか?
- 1,000万円を超えると税負担が増えると聞いたけど、本当か?
そんな悩みに答えるべく、法人成りにあたり最適な資本金の設定について紹介します。
目次
1. 他の会社は資本金をいくらに設定している?
「他の会社はどうなのか?」ということは誰しもが興味があることです。
国税庁が毎年行っている会社標本調査によると、資本金の設定額ごとの法人数は以下の通りとなります。
資本金 | 法人数 | 割合 |
100万円以下 | 455,435社 | 16.6% |
100万円超 | 70,850社 | 2.6% |
200万円超 | 1,138,668社 | 41.5% |
500万円超 | 713,621社 | 26.0% |
1,000万円超 | 145,612社 | 5.3% |
2,000万円超 | 149,759社 | 5.5% |
5,000万円超 | 51,889社 | 1.9% |
1億円超 | 17,882社 | 0.7% |
連結法人 | 1,721社 | 0.1% |
合計 | 2,745,437社 |
この数字は日本の全ての法人を対象としているものであるため、上場している会社などの大企業も含まれていますが、それを踏まえても大半の法人は資本金1,000万円以下に設定していることがわかります。
よく会社設立の際の資本金の平均は100万円~300万円と言われていますが、私どもがこれまで関与した法人成りの手続きにおいて、最も多かったのは100万円であり、資本金を100万円に設定した会社が資本金の面で何か不都合があったことはほとんどありません。
国税庁の統計数値からも、一般的に言われている数字からも、さらには私どもの実務的な視点からも、法人設立時の資本金の平均は100万円~300万円と言えます。
2. 資本金を1円にすると法人口座開設が難しい
会社は1円でも設立することができますので、資本金を1円とすること検討した人は多いでしょう。
ただし、資本金を1円にすると法人口座の開設が極端に難しくなります。
銀行は実態のない法人に対して口座開設はしてくれません。
もちろん資本金の額だけではなく、営業活動をしている(又はしようとしている)か?事務所は存在しているか?等の面から法人の実態確認をしますが、資本金もその実態確認の面からは重要なポイントとなります。
会社を設立するにあたり、合同会社の場合であったとしても最低60,000円の登録免許税が必要となりますが、資本金が1円の場合は理論的にはこの60,000円の登録免許税すら支払えないこととなりますので、資本金が1円ということは「実態のない会社」と判断されても仕方ありません。
法人口座を開設できないとなると、金融機関からの融資を受けることもできなかったり、得意先からの売上の入金が個人口座のままとなってしまい得意先からの信用が極端に下がってしまったりするなどの不都合が生じます。
資本金が1円でも会社を設立することはできますが、資本金1円での設立はお勧めできません。
3. 資本金を1,000万円にしてしまうと初年度から税負担が増えてしまう
資本金は多ければ多い程、会社としての信用力が高まる一方、資本金を高く設定してしまったがために思いもよらぬ税負担を強いられてしまう可能性があります。
もちろん、資本金を1,000万円超にしなければならないビジネス上の理由がある場合もありますが、何の気なしに資本金を1,000万円超に設定することで発生する税負担は事前に知っておくべきです。
具体的には「法人住民税均等割」と「消費税」の観点からも資本金はいくらにすべきか検討する必要があります。
(1) 法人住民税均等割
法人住民税均等割は各自治体によって多少異なることがありますが、例えば東京都にのみ事務所を構える従業員数50人以下の会社の場合は、法人住民税均等割の税負担は次の通りとなります。
資本金等の額 | 法人住民税均等割額 |
1,000万円以下 | 70,000円 |
1,000万円超 1億円以下 | 180,000円 |
法人住民税均等割は、利益が出ていない法人に対しても、毎年必ず発生するものとなります。資本金を1,000万円にしておけば70,000円で済んだ均等割が、資本金を1,001万円に
してしまうだけで180,000円の均等割が発生してしまうことになります。
(2) 消費税の免税事業者要件
法人成りをする場合、個人事業主のときの売上を引き継いでくるため、基本的には設立初年度から売上が発生することとなります。
売上が発生するとなると、それに伴い取引先から消費税を預り、自社で支払った消費税を差し引いた金額を納付しなければなりませんが、法人成り直後の会社のほとんどは、その納付を免除されている「免税事業者」となることができます。
ただし、この免税事業者となることができるのは「資本金の額が1,000万円未満の場合」に限られています。
資本金を1,000万円に設定してしまったがために、免税事業者としてのメリットを受けることができなくなってしまうと想定外の税負担を強いられてしまうこととなります。
4. 迷ったら資本金は100万円に設定しておけばよい
設立時における資本金が100万円~300万円と言われているのは、以下の2つが理由であると考えられます。
- 銀行口座の開設で資本金の面から不都合が生じることがない
- 消費税の免税事業者にもなれるし、法人住民税均等割の負担も最小限で済む
資本金が100万円の会社よりも500万円の会社の方が、口座開設や融資の審査でも有利に働くと考えるのが一般的ですが、ある程度ご自身の生活費を確保しつつ、精神的にも健全な状態でビジネスをスタートするのが良いでしょう。
「特に資本金にこだわりはないが、不都合がない金額で設定したい」という人は100万円で設定しておけば極端に不都合が生じる場面は出てこないと言えます。
おわりに
今回は法人成りにおける最適な資本金の設定について紹介してきました。
繰り返しになりますが、100万円に設定しておくことで、「資本金の額」という面のみから不都合が生じてしまうことは少ないと言えます。
もちろん会社の状況によって資本金を100万円以上にした方がいい場合もあります。
スペラビ税理士法人では数多くの法人成りサポートをした実績があります。資本金の設定のみならず法人成り手続でお悩みの方は、まずは当法人へご相談下さい。