最近では会社員の方が不動産投資をすることも増えてきましたが、不動産投資に関して確定申告を失念している方は意外と多いです。
確定申告をしなければならない人が確定申告をしなかった場合には、通常納めるべき税金に加えて、加算税等のペナルティも課税されてしまいます。
一方で、確定申告をすれば税金の還付を受けることができるにも関わらず、確定申告をしていないケースも見られます。
そこで今回は、会社員の方の家賃収入に関する確定申告を解説します。
目次
1. 確定申告をしなければいけない場合
会社員の方は、勤務先の会社の「年末調整」によって税金計算が完結しますが、勤務先の会社からの給料以外に収入がある場合は、原則として、確定申告をしなければなりません。
給料以外の収入があっても確定申告をしなくてよいのは、例えば以下に示すような場合等です。
<例:不動産所得が20万円以下のケース>
給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下の場合は確定申告が不要とされています。
この”20万円を超えているか否か”の判断基準は、家賃収入ではなく、不動産から生じる「所得金額(利益)」です。具体的には次の計算式で計算します。
- 不動産所得金額 = 総収入金額 - 必要経費
総収入金額には、家賃収入や駐車場利用収入のほかに、賃貸の更新料や名義書換料、礼金や返還を要しない保証金、共益費なども含まれます。
必要経費とは、不動産賃貸に関する経費が該当します。例えば、賃貸物件の減価償却費や固定資産税、修繕費や借入金にかかる支払利息等です。
これらの収入から必要経費を控除した金額が20万円以下の場合は、確定申告が不要となります。
なお、不動産投資以外に仮想通貨や転売(せどり)等、他の副業収入がある場合は、それらの合計所得金額で20万円を超えているかを判断する必要があります。
【(参考)給与所得がある方で、所得税等の確定申告が必要なケース】
次の計算において残額があり、さらに(1)から(6)のいずれかに該当する
(計算)
1 各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引いて、課税される所得金額を求めます。
2 課税される所得金額に所得税の税率を乗じて、所得税額を求めます。
3 所得税額から、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額を差し引きます。
(1) 給与の収入金額が2,000万円を超える
(2) 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
(3) 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額との合計額が20万円を超える。
(4) 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払を受けた
(5) 給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた
(6) 在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている
2. 家賃収入の無申告は税務署へバレる?
税務署は他の行政機関と情報を連携しており、日々、様々な方法で税金の徴収漏れを探しています。
また、不動産投資は、金融機関や、保険会社、不動産仲介業者や管理会社等、関与先が複数あることから、関与先に入った税務調査から無申告がバレる可能性もあります。
さらに、税務署がその気になれば、個人口座であってもその動きを把握することは可能です。
1部屋分の投資マンション程度であっても、無申告がバレる可能性は非常に高いといえます。
3. 家賃収入を確定申告していない場合はどうなる?
確定申告義務があるにも関わらず家賃収入を確定申告していない場合は、無申告として以下の加算税などのペナルティが課される可能性があります。
せっかく不動産投資で稼いだ利益が、税金のペナルティによって消えてしまっては元も子もありません。
無申告の場合にどのようなペナルティが発生するか、確認しておきましょう。
(1) 無申告加算税
自ら期限後申告をした場合や、税務署から所得金額の決定処分を受けた場合で、納めるべき税金がある場合に課税されます。
課税額は状況により異なりまずが、納めるべき税金の5%から20%がペナルティとして課税されます。
自ら期限後申告した場合 | 納税額×5% | |
税務調査等で発覚した場合 | 納税額50万円まで | 納税額×15% |
納税額50万円超 | 納税額×20% |
(2) 重加算税
所得を隠して税金の納付を避けるためにわざと申告していないなど、税務署から悪質と判断された場合は上記の「無申告加算税」ではなく、「重加算税」が課税されます。
こちらは悪質なケースのみが課税されるため、自ら期限後申告をする場合に適用される可能性は低く、税務調査等での指摘で無申告が明らかになった場合に適用されるケースが多いです。
意図的な無申告で悪質と判断された場合 | 納税額×40% |
(3) 延滞税
延滞税は、法定納付期限までに支払うべき税金を納付していない場合に課税されます。
また、期限内に申告をしたとしても、期限後に修正、更正または決定の処分を受けた時に、納めるべき税額が不足していた場合にも延滞税が発生します。
延滞税の税率は原則以下の通りですが、計算される年度ごとに税率が異なるため、心配であれば税理士に確認しましょう。
納期限の翌日から2月を経過する日までの期間 | 納付すべき税額×7.3% |
2月を経過する日の翌日以後 | 納付すべき税額×14.6% |
4. 過去の無申告期間はどのように対応する?
過去に無申告期間がある場合は、すぐに申告できるように準備をしましょう。
税務調査等で税務署から無申告を指摘される前に、自ら確定申告をすることで一部のペナルティが免除/軽減される可能性があります。
無申告期間の確定申告の準備は過去何年分を対象にするかですが、時効が成立している期間は税務署も指摘できないため、時効が成立していない期間のみで問題ありません。
この時効とは、所得税の場合は原則5年で成立するため過去5年間で無申告だった期間の申告準備をしましょう。
具体的にすべき対応は以下の3つです。
- 状況(無申告期間)の把握をする
- 税理士へ相談しましょう
- 資料を揃えて申告と納税をしましょう
①状況(無申告期間)の把握
まずはご自身の状況の把握が先決です。
- 不動産投資を始めた日
- 物件の購入価格
- 初期費用
- 毎月の不動産収入の金額
- 毎月発生する必要経費の金額 など
これらの情報を収集するところから始めましょう。
②税理士へ相談
無申告期間の状況把握が完了したらできるだけ早く税理士へ相談しましょう。
無申告対応に慣れた税理士であれば、無申告期間の申告書作成をサポートし、かつ、その後の税務調査に立ち会って税務調査官からの質問に対応してくれます。
ただし、納税者の味方としてサポートするためには、税理士が無申告期間の数字の流れなどすべてを理解する必要があるため、情報はすべて伝えるようにしましょう。質問に対してウソをつかずに答えることも重要です。
③資料を揃えて申告と納税をする
最後に、税理士のサポートを受けて作成した申告書の提出と納税を行います。
申告後に税務署から申告内容について質問等がある場合がありますが、税理士と一緒に整理した資料を基に申告書を作成していれば焦る必要はありません。
税理士は納税者の税務を代理できるため、税務署からの質問の前さばきもしてくれます。
5. 確定申告義務が無くとも確定申告をしたほうがいい場合
確定申告義務がなくても、あえて確定申告をした方が良いケースがあります。
それは、例えば不動産投資初年度で「不動産所得がマイナス」となる場合です。
不動産投資初年度は、例えば以下のように、投資初年度で突発的に発生するコストがあります。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 不動産登記にかかる司法書士報酬
- リフォーム費用 など
その年の家賃収入から毎月発生する費用(管理費や修繕積立金、ローン金利や減価償却費に加えて上記の必要経費)を控除すると、投資初年度の不動産所得がマイナス(赤字)になるケースは多いです。
不動産所得が赤字になった場合、勤務先の会社の給与所得と相殺をすることができますので、その分税金が還付されることになります。
「どの初期費用が必要経費に算入することができるか」については慎重に検討した方が良いですが、投資初年度においては、確定申告をすることで還付を受けることができるケースは多いと思います。
おわりに
不動産投資において最も重要なことは「税金を考慮したリターン(利益)」を正確に把握することにあります。
会社員の方は、年末調整という制度があるが故に、(悪意なく)税金に関する意識が低くなりがちです。
投資によって利益が出れば利益に応じた納税が発生します。税金控除前の利益が自身のリターンだと思い込んでいると、後々税金支払いやそのペナルティの支払等によって多くの支出が発生し、儲けがほとんどなくなってしまうということも起こり得るので注意してください。
家賃収入があり、確定申告に不安を感じている方や無申告期間がある方は、まずはお問合せフォームよりご相談下さい。