税理士変更する時の現在の税理士への断り方

税理士変更を検討し、いざ思い立って行動を開始してみたものの「どうやって現在の税理士さんに断りを入れようか」というところで悩まれている方はいらっしゃいませんか?

今回は、税理士変更の際の「断り方」について、『断られる側』でもあり『申し込まれる側』でもある税理士の立場からまとめてみようと思います。

 

1. そもそも税理士を変更して大丈夫?

結論から申し上げると、大丈夫です。

但し、以下の点には気を付けた方が良いです。

(1) 頻繁な税理士変更は避けるべき(特に法人)

頻繁な税理士変更はお勧めできません。

税理士業務はサービス業です。

年1回の確定申告のみしか業務が生じない個人/個人事業主ならともかく、頻繁に税理士変更を繰り返す法人は、サービスを提供する税理士の側からの信頼が得られにくくなります。そうなると、税理士変更の度にサービスの質が低下していってしまう可能性もあります。

(2) 税理士変更の「理由」によって「断り方」は変える

税理士変更をする際には、なぜ税理士を変更したいのか、という理由が大事です。

税理士もひとりの人間です。

前向きな理由であればあるほど、断られる方も納得感がありますし、場合によっては応援してくれるでしょう。

一方で、税理士変更の理由は必ずしも前向きなものばかりではありません。そのような場合に直接不満をぶつけて解約してしまっては、後々トラブルとなる可能性もあります。税理士変更の理由が現在の税理士への不満等にある場合でも、円満な契約解除ができる「断り方」をすることは重要です。

2. 理由別 現在の税理士への「断り方」

それでは、理由別に「断り方」を見ていきます。

(1) 前向きな理由がある場合の「断り方」

この場合、現在の税理士の方には、正直かつ丁寧に理由をお伝えしてよいです

ほとんどの場合、角が立つことはありません。

 

前向きな理由とは、例えば、税理士へのニーズが変化した場合がこれに該当します。

  • IPOを目指すため、上場準備対応できる税理士に変更したい
  • ファンドや上場会社の出資を得たので、企業会計対応に慣れている税理士がいい
  • 新しい事業分野に詳しい、金融商品取引に手慣れた税理士がいい
  • 原価計算制度構築に強い、海外取引に強い税理士がいい 等

 

現代税法は複雑で、全ての分野に高レベルで精通した税理士は存在しません。

税理士には得意分野と不得意分野が必ずあるのです。

また、サービスの仕方も、幅広く様々な個人/法人を対象としている税理士もいれば、最低限のサービスを廉価で提供することに特化している税理士、高単価高付加価値提供に特化している税理士もいます。

 

不得意分野や特化していない分野の領域に対するニーズが強まってきた場合、むしろ現在の税理士にとっても、税理士変更は渡りに船となる可能性があります。

 

(2) 前向きな理由が無い場合(不満がある場合)の「断り方」

理由は後述しますが、この場合でも角の立たない「断り方」をするべきです。

昔から推奨されているのは“親戚が税理士になった”という言い方です。

が、税理士は誰でも簡単に検索できるので、それよりも、以下の「断り方」の方が良いと思います。

  • 税務計算まで出来る親戚が経理を手伝ってくれることになった(内製化)
  • 出資や融資を受ける予定の先から勧められている税理士がおり、断れない(外圧)

 

また、不満の原因が料金にある場合、譲歩も含めた「断り方」をするのも一案です。

  • 業績悪化 (または見込)につき、決算料のみに減額して対応してもらえないか

 

 

3. 現在の税理士に対する「断り方」のコツ

(1) 税理士変更の段取りを確認し、適切なタイミングで断りを入れる

税理士変更は以下のステップで段取り良く行いましょう。

①現在の税理士との顧問契約書を確認する

まずするべきことです。何か月前に契約解除を通知する必要があるのか、違約金が発生しないか等を確認します。

②次の税理士候補を先に見つけておく

税理士報酬が現在の税理士と後任税理士へ二重払いとなる期間が発生してしまったり、税理士のいない空白期間が発生してしまったりするのを避けるために、後任候補は先に見つけておきます。

③次の税理士を決定する

面談や税理士のプロフィール等から、特徴や得意分野、業務スコープの詳細を確認し、税理士変更の目的(理由)に合致した税理士を決定させます。

④現在の税理士に断りを入れる←断りを入れるのはこのタイミング!

ここまで来た段階で、現在の税理士に契約解除を申し入れます。上述の理由別 現在の税理士への「断り方」を参考に、税理士変更を伝達しましょう。

⑤書類の返却/引継ぎを行う←円満に契約解除すべき理由がこれ!

よい「断り方」をするべき理由は、ここに凝縮されています。

契約解除の申入れをしたら、預けている書類の返却を依頼しますが、ここでうまく書類の返却に応じてもらえないと引継ぎに支障をきたします。

また、円満な契約解除であれば、現在の税理士から後任税理士へ、税務調査で論点となっていた事項等を伝達する機会を設定することも可能になります。

 

このあたりの詳細については、別途「税理士変更 タイミング(仮称)」にまとめる予定です。

 

(2) 税理士変更を伝達すべき相手

税理士変更は、担当者ではなく、中小の事務所であれば所長に、大手事務所であれば直属の税理士に伝達しましょう。

担当者に伝えても、担当者の立場としては、所長や直属の上司に伝えにくいでしょうし、これにより、かえって税理士変更に時間を要することも考えられます。

 

(3) 現在の税理士に抵抗されたら

上述の「断り方」や段取りを順守すれば、現在の税理士に抵抗されてトラブルになることは無いはずですが、念のため、トラブルに遭遇した際の対応を記載しておきます。

①書類を返却してもらえない

契約で書類の返還が義務付けられている場合、契約違反を問うことができます。それでも返却をしてもらえない場合は、税理士会に相談してみましょう。

②のらりくらりと時間稼ぎにあい、結局うやむやにされてしまった

この場合は、毅然とした態度で税理士変更を伝えましょう。

契約解除の意思を書面で送付(契約解除通知)することも有効です。

それでもはぐらかされてしまう場合には、税理士会に相談しましょう。

 

4. 税理士変更にまつわる嘘

ここでは、税理士変更の際によく聞く噂(デマ)について記載します。

嘘1:税務調査が来やすくなる

税理士変更をすると税務調査が来やすくなるのではないか、と心配される方がいらっしゃいます。

心配無用です。税理士変更と税務調査には何の関係もありません。

もし、税理士変更の直後に税務調査が来たとすれば、それは単なる偶然です。

ただし、税理士によって、売上の計上時期や経費算入の基準について判断が異なることもあります。事業実態に変化が無いにもかかわらず、前期との連動性が大きく損なわれてしまうと外観的にも違和感を持たれてしまう可能性があるのでご注意ください。

 

嘘2:銀行の審査が厳しくなる

これも全く関係ありません。

銀行の審査は、あくまでも会社や事業の内容、財務状況等を勘案して行われるもので、“税理士が誰か”によってその評価が変わるものではありません。

勿論、オプション等で資金調達をサポートしてくれる税理士はいるので、資金調達のニーズがある場合には、変更後の税理士がそうしたサポートをできるかどうかも確認しておいた方が良いです。

 

嘘3:当社の秘密をばらされる

税理士は税理士法で守秘義務の順守が求められているため、通常では考えられません。これは、現在の税理士が税務署OBであっても同様です。

顧問契約解除がきっかけで税理士OBが税務署に情報をリークする、ということもございませんのでご安心ください。

万一、「秘密をばらすぞ」と言われた場合には、税理士法違反(懲戒の適用があるほか、2年以上の懲役または100万円以下の罰金)を問うことが可能です。

 

おわりに

今回は税理士変更の「断り方」を中心に、これにまつわる論点をまとめてみました。

お世話になった税理士に対して契約解除を申し入れるのは気が重い方も多いと思います。

冒頭申し上げました通り、頻繁な税理士変更は避けるべきですし、いい「断り方」をするためにも、税理士変更は金額だけでなく+αの理由も付けて、なるべく円満に進めるべきと考えます。

 

なお、当法人では、会社設立や事業開始時の顧問契約だけでなく、税理士変更による顧問契約も承っております。本ウェブサイトでも税理士変更を承っておりますので「断り方」を含め、税理士変更に悩まれている方は遠慮なくご相談ください。

また、面談はオンライン対応もしており、かつ、クラウド会計ソフトを導入しているため遠隔地でも問題なく対応できますので、お気軽にお問合せ下さい。

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