個人事業主が法人成りをした場合、基本的には「個人事業を廃止」し、新たに法人としての事業を開始することとなります。
廃止した年度分の個人事業としての確定申告が必要になることはもちろん、「個人事業を廃止したこと」を税務署等に通知(=届出)する必要があります。
今回は個人事業主が法人成りをした場合の廃業届について紹介します。
なお、法人成りにより個人事業を廃止した年度の確定申告については、こちらを参考にしてみて下さい。
法人成りをした場合、廃業届以外にもさまざまな手続きや書類提出などを行う必要があります。
そのような手続きについては、専門家にお任せすることで本来の業務に集中できるといったメリットがあります。
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1. 廃業届の提出が必要なケース
個人事業として行ってきた事業を廃業し、法人成りをして会社としてその事業を行う場合には廃業に関する届出が必要となります。
廃業届の提出に際しては、廃業日をいつにするか、がポイントとなります。
法人成りの場合、「いつ廃業したか」は明確ではないことが多いでしょう。
- 法人を設立した日
- 法人口座が開設できた日
- 法人としての営業活動を開始した日
- 契約の切り替えが完了した日
- 個人事業としての入出金が完全に終了した日
など、各々の事情に照らし合わせて、合理的な日を廃業日として決める必要があります。
廃業日が決まれば、あとは後々紹介する廃業に関する届出書を提出期限までに税務署等に提出することとなります。
これまで個人事業主として毎年確定申告をしてきたものの、法人成りをした途端に確定申告をしなくなった場合、税務署に
「この人、確定申告し忘れているな・・・」
と思われ、確定申告期限を過ぎたころに突然連絡が来るなんてこともありますので、廃業届は忘れずに提出しましょう。
2. 廃業届を出さなくても良いケース
一方で、全ての個人事業主が必ず廃業届を提出しなければならないわけではなく、個人事業主が法人成りをしても廃業に関する届出が不要なケースもあります。
例えば以下のケースです。
- 個人事業主として事業の一部を継続するとき
- 不動産所得が発生するとき
1つ目の典型が、個人事業主として複数事業を行ってきたが、一部の事業のみを法人成りする場合です。このような場合では、個人事業を完全に廃業したわけではないので、廃業届の提出は不要となります。
また、個人から設立した会社へ自宅の一部を貸し付けるなど、個人から不動産の貸付がある場合は、個人としての不動産所得が発生することとなります。このような場合も、廃業に関する届出の全てを提出する必要はありません。
法人成りをしたとは言え、個人事業主としての事業所得や不動産所得等が引き続き発生する見込みの場合は、廃業届等の提出をしない方が良い場合もあります。
例えば、不必要に廃業届を提出して青色申告を取りやめてしまった場合、青色申告のメリットである特別控除(最大65万円)や赤字の繰り越しができなくなることもありますので、個人事業主としての事業所得や不動産所得が引き続き発生する可能性がある場合は、税理士に相談の上、届出書の提出が必要かどうか検討するようにしましょう。
3. 廃業届を提出する際の注意点
(1) 提出時期
提出する届出によって提出期限は異なりますが、事業廃止の日から1月以内のケースが多いです。
しかし、提出期限が早いものだと、事業廃止後、速やかに提出が必要となるものもありますのでそれぞれの届出の提出期限を確認することが必要です。
税務署への届出は国税(所得税や消費税など)に関するものですが、地方自治体が管理する地方税にも廃業に関する届出(事業開始(廃止)等申告書)を提出することとなります。
届出書の種類や提出先によって、提出期限がまばらになるため、後述する提出書類と提出期限を参考にしてみて下さい。
(2) 提出すべき書類
個人事業の廃業に際して提出が必要となる書類は、一般的には以下のものとなります。
提出書類 | 税目 |
① 個人事業の開業・廃業等届出書 | 所得税 |
② 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 所得税 |
③ 給与支払事務所等の廃止届出書 | 所得税 |
④ 事業廃止届出書 | 消費税 |
⑤ 業廃止申告書 | 地方税 |
⑥ 所得税の予定納税の7月(11月)減額申請書 | 所得税 |
上記のうち、各々の状況に応じて提出が必要となるものや提出が不要なものもありますので、どの届出を提出すればいいかわからない場合は、税理士に相談するようにしましょう。
4. 廃業した場合に提出が必要な届出
① 個人事業の開業・廃業等届出書(所得税)
- 法人成りによって個人事業を廃業する場合に提出する書類
- 提出期限:事業を廃止した日から1月以内
② 所得税の青色申告の取りやめ届出書 (所得税)
- 個人事業主の時に青色申告で所得税確定申告書していた方で、法人成り後は会社からの給与以外に所得がない場合に提出する書類
- 提出期限:事業を廃止する年の翌年3月15日まで
③ 給与支払事務所等の廃止届出書 (所得税)
- 個人事業主の時に、従業員や事業専従者に給与を払っていた場合に提出する書類
- 提出期限:事業を廃止した日から1月以内
→詳細はこちら(国税庁HP)
④ 事業廃止届出書(消費税)
- 個人事業主の時に消費税の納税義務者であった場合で、法人成りによって個人事業を廃業する場合に提出する書類
- 提出期限:事業廃止後、速やかに
→詳細はこちら(国税庁HP)
⑤ 事業廃止申告書(東京都)(地方税)
- 法人成りによって個人事業を廃業する場合に提出する書類
- 提出期限:事業を廃止した日から10日以内
→詳細はこちら(東京都主税局HP)
⑥ 所得税の予定納税の7月(11月)減額申請書 (所得税)
- 年の途中で個人事業主から法人成りをした場合、一般的には個人の所得は前年に比べて減少します。この書類は、税務署から通知された予定納税額が多い場合に減額してもらうために提出するものです。
- 提出期限:第1期分及び第2期分の減額申請については、その年の7月1日から7月15日まで。第2期分のみの減額申請については、その年の11月1日から11月15日まで
おわりに
法人成りをする場合、どうしても会社設立手続にばかり目が行きがちとなりますが、個人事業の廃業に関する手続もしなければなりません。
例えば年始に法人成りをした場合、会社設立手続きに加え「所得税の確定申告」や「廃業に関する手続き」もしなければならず、手続に時間ばかり取られて本業がおろそかになってしまうなんてことも想定されます。
スペラビ税理士法人では、経営者がご自身のビジネスへより多くの時間を使うことができるように、廃業に関する手続のサポートはもちろんのこと、法人設立のサポートもしております。
法人成りをご検討中の方や、廃業に関する手続きについて少しでも気になることがあれば、お問合せフォームよりお気軽にご連絡下さい。