無申告は税務署にほぼ確実でバレます。
意図的に納税を回避するためにわざと申告しておらず、「万が一税務署バレたらその時に申告しよう」と考えている方もいると思いますが、これは故意の「脱税」であり、場合によっては刑事罰なんてこともあり得ます。
「そうは言っても金額も大きくないし税務調査なんか来ないでしょう」と思っている方、これも間違いです。金額に限らず毎年無申告者に対する税務調査が行われています。
今回は無申告者を対象にした税務調査の流れや無申告者がとるべき行動について紹介します。
1. 税務調査の流れ(概要)
(1) 税務署から連絡が来る
税務調査は、税務署から事前に連絡が入るケースがほとんどですが、事前連絡をせずに調査官が直接個人の家や会社に来ることも少なからずあります。
税務署は膨大な情報の中から無申告の個人や法人を特定します。
税務署目線で見れば、こうした手間をかけたうえで連絡をするわけですから、複数年の無申告期間から税金を徴収できる裏付けがあることでしょう。
税務署から連絡が来たら正直に無申告だったことを認め、税務調査当日までの間にしっかりと準備をするべきです。
(2) 税務調査開始
税務調査当日は、納税者が作成した申告書や資料を調査官が確認して、資料の内容など調査官からの質問に対応していきます。
しかし、実務上、無申告の場合は領収書等の基礎資料を捨ててしまっていることが多く見受けられます。
基礎資料が無い場合、内容確認作業に時間がかかるため、税務調査が長期化する傾向にあります。
なお、調査官からの質問には正直に答えましょう。ここでウソをつくと、悪質な隠ぺいと判断されて高額なペナルティを課されることもあります。
(3) 追加納税額の決定
無申告期間すべての税務調査が完了すると、調査完了後の所得をもとに税金が計算されます。
この税金とは2種類あり、本来納めるべきであった所得税や法人税の税金と、無申告だったことによるペナルティです。
無申告の場合のペナルティとは以下の通りです。
なお、無申告の内容や税務調査中の対応が悪質と判断されると、無申告加算税に代えて重加算税(本来納めるべき税金の40%)が課税されます。
- 無申告加算税(15%~20%)+延滞税(年7.3%~14.6%)
- 重加算税(悪質な隠ぺいなどがあった場合:40%)+延滞税(年7.3%~14.6%)
(4) 納税できなかったら?
無申告の場合の税金は、通常の税金に加えペナルティも課税されることから、税務調査対象期間が5年間など複数年だった場合は納税額が大きな金額になることが想定されます。
無申告の方が、例えば5年もの間の追徴課税をされた場合には、手元に納税できるだけの資金を持ち合わせていないこともあるでしょう。
税金は一括納付が原則ですが、場合によっては分割納付としてもらうこともできます。分割納付を希望する場合は、早めに税務署へ相談をしましょう。
2. そもそも無申告者に対しても税務調査は行われる?
無申告者に対する税務調査は税務署も力を入れています。
平成30年度の国税庁の資料によると、無申告を対象にした税務調査での追徴税額は以下と示されております。
【平成30年度における無申告者に対する税務調査実績】
対象 | 追徴税額 |
法人(法人税・消費税) | 142億円 |
個人(所得税・消費税) | 366億円 |
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/hojin_chosa/pdf/hojin_chosa.pdf
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/shotoku_shohi/pdf/0019011-068.pdf
平成30年度の法人税の追徴税額が前年対比151.4%となっている事実からも税務署の本気度が伝わってきます。
3. 税務調査が来る前に実施しておくべきこと
無申告状態にあった場合でも、税務調査が来る前に、自ら正直に無申告期間の申告・納税をすることは可能です。
この場合でもペナルティは発生しますが、その金額が少なくて済みます!
従って、無申告の方は、税務調査を来るよりも先に、以下の行動をとることをお勧めします。
(1)無申告期間を確認する
まずは、申告をすべき期間を把握するために、無申告期間がいつからいつまでなのかを確認しましょう。
無申告期間を確認せずに軽い気持ちで「直近2年だけ申告すればいいや」などの対応をしてしまうと、数年後に税務調査で5年前の無申告を指摘されるなど痛い目を見ることもあります。無申告期間の把握は正しく行いましょう。
(2)無申告の対応に強い税理士に相談する
無申告には様々な経緯があると思いますが、領収書すら破棄してしまっているケースがほとんどでしょう。
そのような状況にも関わらず、多くの時間を使ってご自身で無申告期間の申告書を試行錯誤しながら作成したとしても、正しい申告書を作成することは難しいです。
したがって、無申告の期間があることが分かり次第、すぐに税理士へ相談しましょう。
事前に税理士へ相談するメリットとして申告書作成のサポートはもちろんのこと、申告後に内容確認のため税務調査が入った場合にもスムーズに対応できることが挙げられます。
(3)期限後申告をして納税をする
税理士に相談したら、可能な限り早く無申告期間の税金を計算して申告と納税を行います。
前述の通り、無申告の場合、税務調査が入る前に自ら期限後申告をしたとしても、上記2章で説明した加算税などのペナルティは課税されてしまいます。
しかし、税務調査が入る前に自ら期限後申告をすると、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。当然、税務調査を待ち続けるよりも無申告の期間が短くなるでしょうから、延滞税も少なくなるでしょう。
申告すべき無申告期間は、税金の時効が5年のため、無申告期間が5年以上あったとしても、まずは5年分の申告書を作成して納税をすることが一般的です。
しかし、無申告が悪質と判断された場合には7年分の申告を求められる可能性もあります。
なお、ウソの内容をもとに申告書を作成するのは絶対にやめましょう。
最悪の場合はそのウソが悪質な隠ぺいと判断されて、重加算税が課税されることがあり得ます。
4. 税務署から無申告について連絡がきてしまった場合は?
税務署から連絡がきてしまったら、知らないふりをするなどの無駄な抵抗はせずに素直に無申告だったことを認めましょう。
そのうえで、以下対応を可及的速やかに行いましょう。
(1)可能な限り情報を揃える
税務署から無申告について連絡がきてしまった場合、これまでの無申告がすべてバレたと覚悟をして、可能な限り税務署から指示された資料や売上や経費の情報を揃えましょう。
過去の請求書や領収書などを破棄してしまっている場合には、可能な限り、取引先へ連絡して再発行していただくか、いくらの取引があったかを証明してもらえるような取引証明書を発行してもらう努力をしましょう。
(2)無申告の対応に強い税理士に相談する
税務署が来る前の自主的対応と同様、無申告の対応経験のある税理士へサポートを依頼しましょう。
期限後申告は、対応次第では百万円単位で税額が変わってくるため、税理士への依頼時には、無申告のサポートが可能か、無申告の対応経験があるか等を確認するようにしましょう。
おわりに
無申告を対象にした税務調査の流れを中心に解説しましたが、いかがでしょうか。
繰り返しになりますが、無申告はほぼ確実に税務署にバレます。
やむを得ず無申告状態に陥ってしまった場合には、税務調査の連絡が来ないことを祈るのではなく、税務調査が入る前に自主的に期限後申告に向けて動き出すことがベストな選択です。
スぺラビ税理士法人では、無申告期間の自主的な期限後申告もサポートしています。
無申告期間の税務調査が入ることになってしまった場合など、急なサポート対応も可能ですので、まずはお問合せフォームよりご相談下さい。