子会社設立時の資本金はいくらに設定するべきか?

大きな節税メリットや、節税以外にも多くのビジネス上のメリットがある子会社設立。

いざ子会社設立をしようと決意したとき「子会社の資本金はいくらにするべきか?」ということは誰しもが悩むことです。

もちろん資本金を1円として子会社設立をすることも可能ですが、1円で子会社設立をすると色々と不都合が生じてしまうことがあり、あまりお勧めはできません。

ここでは、子会社設立をするにあたり、資本金をいくらに設定するべきか、について紹介していきます。

 

 

1. 資本金を1円にすると法人口座開設が難しい

まず、子会社は1円でも設立することができますので、「資本金1円での子会社設立」を検討した人も多いでしょう。

 

結論から言うと、1円での子会社設立はお勧めできません

理論上は1円でも子会社設立は可能ですが、銀行口座の開設に苦労するからです。

 

子会社を設立するということは「親会社と法人格を別にして事業を始める」ことを意味しますので、当然に子会社として銀行口座を開設しなければなりません。

子会社としての売上の入金が親会社口座であれば、取引先からも「本当に実態のある子会社なのか?」と不審に思われてしまう可能性もあります。

 

銀行は実態のない法人に対して口座開設はしてくれません。

資本金の額だけではなく、営業活動をしている(又はしようとしている)か?事務所は存在しているか?等の面から法人の実態確認をしますが、資本金もその実態確認の面からは重要なポイントとなります。資本金を1円としてしまうと「実態がない法人」とみなされてしまう可能性があります。

 

そのため、金融機関や取引先からの「信用面」で資本金を1円とすることは避けた方がいいでしょう。

 

2. 資本金を1,000万円以上(超)・1億円超にしてしまうと税負担が増える?

では、逆に、資本金は増やせば増やすほど良いのでしょうか?

業種を問わず、赤字の会社でも納める必要がある代表的な税金は次の3つです。

  • 「法人住民税均等割」
  • 「消費税」
  • 「外形標準課税」

また、当年度が赤字(課税所得がマイナス)だった場合、当該赤字を翌年度以降の黒字と相殺できます。これを繰越欠損金といいます。

 

実は、赤字の会社でも納める必要のある税金額や、繰越欠損金がどの程度利用できるかは、資本金の額に左右されるのです。

その基準となる資本金額が1,000万円と1億円です。

 

子会社の資本金を1億円超にするか否かで悩まれるのは主として大企業かと思いますので、詳細な説明は別の機会に譲りたいと思います。
端的に言えば、資本金を1億円超にすると、(i)繰越欠損金の利用制限と、(ii)外形標準課税がかかります。逆に言えば、1億円以下なら(i)繰越欠損金の利用制限はなく、(ii)外形標準課税もかかってきません。

 

では、資本金1,000万円では何が起こるでしょうか?

以下で詳しく見ていきましょう。

(1) 法人住民税均等割

法人住民税均等割は各自治体によって多少異なることがありますが、例えば東京都にのみ事務所を構える従業員数50人以下の会社の場合は、法人住民税均等割の税負担は次の通りとなります。

 

資本金等の額 法人住民税均等割額
1,000万円以下 70,000円
1,000万円超 1億円以下 180,000円

法人住民税均等割は、赤字の法人に対しても、毎年必ず発生するものとなります。資本金を1,000万円までにしておけば70,000円で済んだ均等割が、資本金を1,001万円にしてしまうだけで倍以上の180,000円の均等割が発生してしまうことになります。

 

(2) 消費税の免税事業者要件

ある程度事業規模が拡大して子会社設立をする場合、子会社としても初年度から売上が発生することが見込まれます。

 

売上が発生するとなると、それに伴い取引先から消費税を預り、自社で支払った消費税を差し引いた金額を納付しなければなりませんが、子会社を設立した直後の会社のほとんどは、一定期間はその納付を免除されている「免税事業者」となることができます。

 

ただし、この免税事業者となることができるのは「資本金の額が1,000万円未満の場合」に限られています。

 

資本金を1,000万円に設定してしまったがために、免税事業者としてのメリットを受けることができなくなってしまうと想定外の税負担を強いられてしまうこととなります。

 

なお、子会社設立に係る消費税の論点として、親会社の売上規模や子会社の設立方法によっては、子会社の資本金が1,000万円未満でも免税事業者としてのメリットを受けることができない場合があります。
実際に消費税の免税事業者を視野に入れて子会社設立をする場合は、事前に税理士に相談することをお勧めします。

 

3. 小さく子会社設立する場合、資本金は100万円でもOK

そもそも、会社設立時の資本金は100万円~300万円が相場であると言われていますが、以下の2つがその理由であると考えられます。

  • 銀行口座の開設で資本金の面から不都合が生じることがない
  • 消費税の免税事業者にもなれるし、法人住民税均等割の負担も最小限で済む

 

もちろん資本金が100万円の会社よりも500万円の会社の方が、口座開設や融資の審査でも有利に働くと考えるのが一般的ですが、ある程度親会社に現金を確保しつつ、子会社のビジネスが順調に行うことができる状態でビジネスをスタートするのが良いでしょう。

 

資本金は後からでも増やせます。「特に資本金にこだわりはないが、不都合がない金額で設定したい」という場合は、当座、100万円で設定しておけば極端に不都合が生じる場面は出てこないと言えます。

 

4.(参考)他の会社は資本金をいくらに設定している?

非上場会社の資本金は登記簿を取り寄せる等しないと把握できないケースもあります。
自由に登記を取得できるシステムを契約していない場合、「世の中の会社は資本金をいくらぐらいに設定しているのか?」と気になることかと思います。

 

子会社に限定した調査結果は公表されていないですが、日本の全ての法人を対象とした国税庁が毎年行っている会社標本調査によると、資本金の設定額ごとの法人数は以下の通りとなります。

資本金 法人数 割合
100万円以下 455,435社 16.6%
100万円超 70,850社 2.6%
200万円超 1,138,668社 41.5%
500万円超 713,621社 26.0%
1,000万円超 145,612社 5.3%
2,000万円超 149,759社 5.5%
5,000万円超 51,889社 1.9%
1億円超 17,882社 0.7%
連結法人 1,721社 0.1%
合計 2,745,437社


国税庁HP_令和元年会社標本調査結果

 

もちろんこの数字は日本の全ての法人を対象としているものであるため、上場している会社などの大企業も含まれています。それを踏まえても大半の法人は資本金1,000万円以下に設定しており、その割合は約85%となっています。

 

おわりに

日本に設立する法人は、資本金の多寡によって税金が異なってきます。

許認可やビジネス上の理由から大きな資本金を必要とする場合はこれに従うのが最善ですが、小さく子会社を設立し、かつ、一定の節税メリットをもって運営したい場合には、一旦、資本金は100万円に設定しておくことで、節税面や銀行口座開設の際にも不都合は生じないと言えるでしょう。

 

スペラビ税理士法人では、数多くの子会社設立サポートをした実績があります。

本稿では小さく子会社設立するケースをモデルとしましたが、1,000万円以上/超の資本金で設立する場合、1億円超で設立する場合にも対応していますし、組織再編(会社分割等)を利用した子会社設立のサポートも得意としています。

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