法人・個人を問わず、初めて税務署から調査の連絡が入った方は、そもそも何年分の資料が必要なのか、気を揉むのではないでしょうか?
税務調査が何年分遡って行われるか、それによってどういう影響があるかを知っておくことは、書類保管や正しく納税することへの意識向上にも繋がります。同時に、正しい知識は、税務調査への不安を和らげることにも繋がります。
今回は、税務調査では過去の何年分を対象に調査が行われるのか解説していきます。
目次
1. そもそも「税務調査」とは?
税務調査とは、税務署等が行う納税額の確認作業です。
日本で納める法人税や所得税は、国や自治体が一方的に賦課するのではなく「私の税額はXX円です」と自ら申告して納めます。この納めた税額が、実際の会計帳簿や元資料と整合するか確認する作業が税務調査です。
税務調査では、調査官に、申告年度だけではなく、過去数年間に遡って書類を調べられます。
また、その種類には、納税者の同意の有無により「任意調査」と「強制調査」があります。
(1) 任意調査とは
一般に「税務調査」といえば、この任意調査の方を指します。任意調査とは、納税者の同意のもとで行われる調査です。
任意調査の中でも、事前に電話等で訪問日や調査対象等が伝達される税務調査を予告調査といい、抜き打ちで尋ねてくる調査を無予告調査といいます。調査の大半は予告調査です。無予告調査は、現金商売を行っている場合に相対的に多く行われる傾向にあります。
予告調査も無予告調査も、基本的に納税者は調査を拒否することはできませんが、全く調整ができないとも限りません。
税務調査のお尋ねがあった際には、必ず、落ち着いて税理士に相談しましょう。
(2) 強制調査とは
こちらは参考程度まで。
強制調査とは、所謂、マルサが裁判所の令状を得て行うものです。
強制調査は資料の押収も可能なほどの強権の基で行われますので、一般に、刑事事件に発展するような脱税が行われている(またはその可能性が高い)場合に限られます。
本稿の以下では、「任意調査」を前提に話を展開していきます。
2. 税務調査では過去何年分の帳簿を調べられるのか?
(1) 法律に「最長」期間の定めはある(国税通則法 令和3年7月1日施行を基に作成)
実は、税務調査で調査官が遡ることができる期間は国税通則法に明記(「最長期間」、または、「時効」と考えてよいです)されています。無制限に過去にさかのぼられては納税者も困るので、法律でその権限を制限しているのです。
この法律によれば、さかのぼれる期間は原則過去5年です。
但し、「偽りその他の不正の行為」(例えば、売上の過少申告や経費の水増し、領収書や請求書の改ざん等)をしていたと認定された場合には、過去7年さかのぼることができます。
また、上記に関係なく欠損金がある法人の場合は過去10年までさかのぼられる可能性があります。これは、欠損金の利用期間が最長10年であることによります。
(2) 実態としては過去何年分が税務調査の対象となる傾向にある?
巷では、税務調査の対象期間は通常過去3年と言われています。これは私たち実務家の認識としても大きな相違はありません。
例えば、直近の決算が2021年3月期で、その申告書を出した年に税務調査を受けた場合、一般論に従えば、対象期間は、 2019年3月期、2020年3月期、2021年3月期 となります。
国税庁からは、「なぜ過去3年のケースが多いのか」は述べられていませんが、まずは3年調べられ、問題があれば5年さかのぼる可能性がある、と考えて頂ければ宜しいのではないでしょうか。
但し、悪さをしていると認定された場合は7年、欠損金を有する会社は最長10年さかのぼられる可能性がありますのでご注意ください。
以上を基に、税務調査で過去何年分が対象となるかをまとめると以下の表の通りとなります。
実務上 | 法律上 | |
原則 | 3年 | 5年 |
過去3年分を見て問題が見つかった場合 | ~5年 | |
悪さをしていると認定された場合 | ~7年 | 7年 |
法人で、欠損金がある場合 | ~10年 | 10年 |
3. 税務調査の確率(周期)は?過去に調査された年度の帳簿を再び調べられることはある?
(1) 法律上の定めと目安
税務調査の対象期間とセットとで語られるのがその確率(周期)です。
実は、確率(周期)に関する法律上の決まりや傾向はありません。
私たちが過去見てきた例も実に様々で、3年程度の周期で税務調査を受けてきた会社もあれば、前回の調査が10年以上前で誰も覚えている人がいないようなケ
ースもありました。
目安として、法人なら3年から5年に1回程度の確率で行われることが多いと考えてよいかと思います。これは前述の通り、国税通則法の遡及期間(時効)が原則5
年であることが背景にあります。
税務調査の確率(周期)について詳しく知りたい方は、別途「税務調査が来る確率はどの程度?傾向と今後の動向とは?」でもまとめていますのでご覧ください。
また、赤字会社でも税務調査が来るのかどうか気になる方は、「赤字の会社も税務調査のターゲットになる?」を併せてご参照ください。
(2) 過去に税務調査で対象となった期間も調査対象になるのか?
ところで、過去に調査対象となった期間が、今回の調査で再度調査対象となることはあるのでしょうか?以下の設例で考えてみましょう。
【設例】
前回の調査 :2018年10月に実施
前回の調査対象:過去3年分(2016年3月期、2017年3月期、2018年3月期)
今回の調査 :2021年10月に予定
Q 今回の税務調査(2021年3月期までを調査対象とする)で、2018年3月期以前が調査対象となり得るのか?
結論は、原則として調査対象にはならないが、可能性はゼロではないです。
これまで見てきたとおり、一般に税務調査の対象となる期間は過去3年、頻度(周期)は3~5年ですので、この点から考えても、それ以前の税務調査で既に調査対象となった期間について再度調査される可能性は相当低いと言えます。
しかしながら、法律上は、原則5年・悪質なら7年さかのぼることができるので、今回の税務調査で新たな事実が発見され、これが問題と見做された場合には過去の税務調査で対象となった期間(上述の設例の場合には2018年3月期以前)について、再度調査される可能性があります。
4. 税務調査は法人と個人で違いはある?調べられる税目は?
税務調査は誰に対して行われるのでしょうか?そして、どんな税目に対して行われるのでしょうか?
まず、税務調査は、法人だけではなく個人も対象となります。法人に比べれば個人が税務調査の対象となる確率は低いですが、個人も対象となるのです。
税務調査の手続も対象期間も、基本的には法人と個人で変わりはありません。
税務調査の対象となる税目は、法人税、所得税、消費税、相続税、源泉所得税、印紙税等、様々です。国税庁レポート2021によれば、調査件数が最も多かった税目は消費税で、追徴税額は法人税、消費税、所得税(申告所得税)の順となっています。
5. 税務調査で指摘された場合に追加で納めるお金はどの程度か?
(1) 追加本税とペナルティ(行政罰)がある
税務調査で申告内容に誤りが発見されたり、意図的な隠蔽や仮装と認定された取引があったりした場合、どのくらいのお金を納めなければならないのでしょうか?
これについては、その内容ごとにペナルティが定められています(令和3年4月1日現在)。
項目 | 内容 | 影響額 |
追加本税 | 本来納めるべき税金額と申告納付した税額の差額 | 当該差額相当 |
過少申告加算税 | ミスや見解相違などによって差が生じた場合 | 税務調査前に修正申告した場合はゼロ それ以外の場合、加算税率:10~15% |
無申告加算税 | 申告期限内に申告しなかった場合 | 加算税率:10~15% |
重加算税 | 事実の隠蔽や仮装により少なく申告した場合 | 加算税率:35~40% |
延滞税 | 法定納付期限までに納めなかった場合 | 延滞税率:2.5~8.8% |
(2) 税務調査による影響を具体例で確かめる
税務調査の結果、本来納めるべき税金が既に申告納付していた税金よりも大きかった場合の影響を具体的に見ていきましょう。
【設例】
・A社は3年前の申告による税金を2,000万円と申告して納付していた
・今回の税務調査で、A社が3年前に本来納付すべきだった税金は5,000万円とされた
・調査官は、A社の3年前の税金は意図的に所得を少なくしたものだと認定した
【影響額の計算】
まずは、追加本税を計算します。
こちらは、本来納付すべき税額が5,000万円、既納付額が2,000万円ですので、
5,000万円-2,000万円=3,000万円
となります。
次に、追加本税以外のペナルティ相当を計算します。
調査官は意図的な所得隠しと認定していますので、以下の重加算税が課されます。
3,000万円×35%=1,050万円
さらにこれだけに留まらず延滞税がかかります。
延滞税の計算は細かいので省略しますが、本設例では、指摘されたのは3年前の申告についてです。仮に、法定納付期限から修正申告の提出及び追加納付までに3年かかったとすると、延滞税は200万円以上になります。
今回の設例では、意図的な所得隠しと認定されてしまったので、本来5,000万円で済んだ税金が6,050万円+延滞税となってしまいました。
なお、この追加本税を支払えないでいると、延滞税はさらに増えていきますのでご注意ください。
終わりに
税務調査では、法律面、あるいは、実態面からみても、申告年度だけとなることは殆どなく、3年程度(場合によっては5年以上)はさかのぼって調査されます。正しく申告している場合とそうでない場合とで調査官が調査対象とする年数が変わってくるだけでなく、万一、指摘により納税額が増えると、追加本税に加えてペナルティが課されるため、影響額が大きくなることがあり得ます。
経験ある役職員がいない場合、税務調査に際しては、税理士と事前に対応策を練り、当日の立ち合いを依頼することが肝要です。スペラビ税理士法人では、税務調査の対応をサポートしていますので、お気軽にご相談ください。